運転席展望DVD。今回はトンネルの話。隧道の中は暗い。だから何も見えないものだと思っていた。だが制作会社によっては鮮明に見えるDVDを出している。驚いた。すると地下鉄シリーズも発売されているというではないか。トンネルファンがいる。二度驚いた
▼見えないものが見えるとなると、そこで気を抜いてはいられない。前照灯に浮かび上がる世界。なるほど内壁の色合いや施工の跡までがうかがえる。空っぽの腸の中を高速の内視鏡が行く。意外に美しくも愉快である。―しかし、と思う。暗いままでもいいではないか
▼遠くにポツンと針の穴のような小さな光が揺れる。あれは出口だろうか。予想はなかなか当たらない。近づいては脇を走り去る。壁面の照明である。複線では対向列車にも出合う。その光は獣のように急に猛々しくなり、目の前で砕け散っていく
▼そのうち遠くの一つの微光が妙にぼやけ始め、尾が出たオタマジャクシのようになる。ただし尾は二つ。それが出口の自然光を反射する二条の線路と分かる。ゆるゆると近づいておいて、未練なげに、さっと明るい外界に飛び出すのだ
▼展望する前方の窓に水滴がしたたる。湧水だ。さてはトンネル内でもらってきたな。通過の儀式みたいなものである。面白さもトンネルだけに奥深い。
(F)