カナロコ鉄道ノート

神奈川の鉄道をもっとおもしろく!写真特集やニュース、鉄道をこよなく愛する神奈川新聞記者がつづります

コラム〈前照灯〉16  【トンネルもまた愉しからずや】

トンネルは表が見えないからつまらない。つまらないが、抜け出た後の開放感は格別だ。全長53.9キロ、特急が全速力で走っても20分以上かかる青函トンネルが終わって、暮色の迫る北海道の雪景色が広がったときの旅情は忘れがたい

▼出た後ばかりでなく、入る前にも味わいがある。例えばこんな具合。徐々に上りこう配となり、線路は掘割を走るようになる。車窓の上の方でススキの穂が輝いたと思う間もなく、暗転

▼これは津軽海峡まで行かなくても、その気になれば通勤路線で味わえる。例えば、横浜―戸塚間にある清水谷戸トンネル。武蔵国と相模国の境にあたり、ちょっとした峠越えの雰囲気になる

▼1887(明治20)年に造られた現役最古のトンネルでもある。赤れんがを巻いた立派な出入り口に、百年前の蒸気機関車のばい煙がこびりついたまま黒ずんでいる

▼東海道線は全通120年を迎えた”老舗”だ。どことなく風格があり、新参路線とは趣が違う。同じく還暦2回分の横須賀線には、田浦駅に明治、大正、昭和のトンネルが仲良く口を開けている

▼乗り慣れた鉄道が、ふとした瞬間に過去を引き寄せる。そんなことを、暗闇の車窓を見つめて考える。つまらないとはいいながら、なかなか楽しいのである。

(さ)

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