昭和30~40年代の江ノ電。緑と黄色に塗り分けられた小さな電車たちが、まだまだ元気に走り回っていた―。鎌倉市に住む画家でデザイナーの樫山孝男さん(61)が、そんな情景を水彩画で再現、ポストカードの形で発売して好評だ。愛らしくて郷愁を誘う作品の数々には、樫山さんの“少年時代”が込められている。
【上・中・下の3回に分けて掲載します】

「江ノ島駅引込線」
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江ノ島駅のほど近く、藤沢市片瀬に生まれ育った樫山さん。江ノ電バスの車庫が子どものころの遊び場で、「よくバスガイドさんが歌の練習をしていました」。
そういう環境にあったので、乗り物への興味は自然と高まった。線路脇の電柱に耳を寄せて、電車が来るのを確かめたことも。その上、中高時代は江ノ電で通学した。「朝のラッシュ時は“続行運転”といって、2両連結と1両のタンコロが続けて走りました。なぜか(生徒が)乗る車両が決まっていてね」と懐かしむ。
作品を手に、少年時代の江ノ電を懐かしむ樫山さん
中学生のころ、鉄道模型のHOゲージを手作りしたほどの“メカ好き”は、現在の作品制作にも生かされている。電車の細部を「正しく描写する」というこだわりだ。「古書店や図書館で古い資料を集め、昔の電車や風景を忠実に描いています。それはラフなスケッチでも同じです」。例えば、鎌倉側、藤沢側で異なる車両番号は、実物通り「藤沢側が304号、鎌倉側が354号」という具合に再現する。
背景となる街並みも決していいかげんには済まさず、当時の白黒写真を参考にするという。例えば、腰越の電車通り(路面電車区間)の絵に書き込まれている「腰越中央診療所」「東京消防庁海の家」「石井質店」といった看板がそうだ。
湘南海岸公園駅をモチーフにした作品には、片隅に小さく「重兼酒店」の文字。今も駅前にある商店の看板をしっかりと描写した。「お店に(作品化の)許可をもらいに行ったら、喜ばれましたよ」
(つづく)
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