「サイトウくん、これ何?」と昨秋のある日、職場の机に山と積まれた段ボール箱を指して同僚が尋ねた。中からゴロゴロと出てきた圧力計やらテールランプやらのすすけた品々を前に、同僚はいっそう不審げな顔をした。部品が失われて殺風景になった1156号に、これらの部品を取り付けてやろうと思う。
世間には鉄道用品の専門店というものがある。廃車になった車両の機器を鉄道会社から買い取って収集家に売るのだ。列車名をあしらったヘッドマーク、行き先を表示する方向幕、駅名板などが人気で、蒸気機関車のプレートなどは100万円近くするのもある。
もちろん私の机上に届いたのはそんなに高くない。北海道のディーゼル車の圧力計が2千円、茨城県の関東鉄道で使われていたテールライトは千円だった。1156に流用できそうな似た格好のものを求めて、都内の専門店を歩き回ったり、北は函館、西は福岡から通信販売で取り寄せたり。
前照灯は東京・大森の小さな自動車部品店で見つけた。横浜市電の前照灯は昭和年代から自動車用の汎用品を使うようになっていて、1953年製の1156も後年、これに取り換えられた。
けれども往年の汎用品は数年前に製造が中止され、すっかり貴重品になっているらしい。何軒もの店に問い合わせ、やっと探し当てたのだった。
大森の部品店のおじさんは、何に使うのかよく分からない角張った金具や電線が整然と置かれた倉庫の棚から、シールドビームと呼ばれる旧型ライトを大事そうに抱えてきた。「これ、宝物だよお」と顔をほころばせている。よく探してくれたね、とでも言いたげな表情が忘れられない。
