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カナロコ列車快走!〈下〉【”あのころ”の汽車旅】

2010年11月29日 月曜日

この「カナロコ鉄道ノート」から生まれた神奈川新聞社の創業120周年記念列車「カナロコ列車」が、11月20日、ついにJR線上を快走した。きっかけは、鉄道好きの記者たちが“妄想”のつもりで書いた落書き。それがいつしか、プロの鉄道マンを動かし、多くの乗客の笑顔を乗せて走る、いっぱしの「列車」にまで成長した。ここであらためて、運行が実現するまでの経緯と、準備に奔走したJRの方々の仕事ぶり、そして当日乗ってくださった皆さんの様子を交え、振り返ってみよう。

【上中下3回に分けて掲載】

《12月3日付の「神奈川新聞」には、「カナロコ列車」の1ページ特集を掲載する予定です》

「カナロコ列車」の送り込み回送で早川へ向かう183系OM103編成。特急マークがかっこいい!=東神奈川付近

「カナロコ列車」の送り込み回送で早川へ向かう183系OM103編成。特急マークがかっこいい!=東神奈川付近

「カナロコ列車」当日の11月20日、午前7時半ごろ。東神奈川駅近くの跨線橋で、カメラを構えた。狙うは「カナロコ列車」の送り込みのための回送列車。週間予報は大外れで、鋭い日差しが斜めに差し込んでくる。きんと冷えた空気が心地よい。

ファインダーに2灯のヘッドライトとクリーム色の車体が見えた。みるみる大きくなり、あっという間に足元を通り過ぎていった。2日前、東大宮の操車場で見た183系が、確かに走っていた。「かながわ」のヘッドマークが板に付いていたようだった。横浜駅で動画を回していた大無田記者と合流。「なんか、もう、僕らの手を離れた感じだったよね」

ありがたいことに、乗客の皆さんは時間通りに集まってくださった。遅刻者がいたらどうするか、電車が遅れたら…と、いろんな状況を想定して計画してきたが、最良の結果になった。

午前10時15分。「ご注意ください、4番線に団体専用列車が入ります」と、JR桜木町駅のホームにアナウンスが流れ、「かながわ」のヘッドマークを掲げた「カナロコ列車」が悠然と入線してきた。プアーンという警笛がかっこいい。乗客の皆さんが席に着く間もなく発車。すぐに根岸線からゆっくり別れて、貨物線の高島線へと入っていった。線路の響きがどこか違う。

みなとみらいを通って、三井倉庫の脇をかすめて、キリンビールの工場を見上げて…と、見たい車窓はたくさんあったが、そんなことをしている余裕はない。私はまず、車掌さんにあいさつをしつつ、車内放送(アンプの具合が悪く、車両によって聞こえが悪かったそうです。申し訳ありません…)。背中が汗でびっしょりになる。

続いて、浜川崎停車中に配布する飲み物を、各車両へ運ぶ。神奈川新聞の14人の乗組員が手分けして、なんとか配り終えた。浜川崎には30分以上止まるので、お客さんが飽きないだろうか…と不安だったが、多くの人が、珍しい貨物駅を楽しんでくださったようだった。

タイミングよく、構内では鶴見線・南武支線80周年記念のイベントが開催されていて、電気機関車のEF65や、コンテナ貨車、長物車(シキ)などが展示されていた。居並んだ鉄道ファンをはじめ、JR貨物やJR東日本の皆さんが手を振って出迎えてくれたのが印象的だった。この後の新鶴見機関区でも、それから貨物駅の横浜羽沢駅でも、貨物の駅員さんたちがみんなで手を振ってくれた。

昼食に「シウマイ弁当」、それから、おやつには小田原発祥の「冷凍みかん」を配った。車内は、ご飯の湿気が染み込んだ経木のにおい。座席を向かい合わせにしてワイワイ食べる家族連れもあって、なんだか昔懐かしい「汽車旅」が再現されていた。「ボク、冷凍みかん初めて食べたよ。おいしかったよ」と、わざわざ私に声を掛けてくれた男の子にしみじみ。

早川~根府川間で相模湾の青さを堪能して、往路の東海道貨物線を上っていると、あっという間に大船を過ぎた。定期列車が1本も走っていない「貨物通路線」に進入し、東海道線、横須賀線、根岸線の上り線を高架線でまたいで根岸線に合流。普段は何げなく見過ごしてしまう「タツノ」「ニコン」「住友セメント」などの工場も、角度が違うと全く新鮮に見えた。

終点の関内到着前、再び車内放送のマイクを握り、「皆さまと、また車内でお目にかかれますことをお祈りいたしまして、お別れいたします」とあいさつした。以前、ブルートレイン「富士・はやぶさ」に同乗取材したとき、車掌さんが実際にアナウンスしていた言葉だ。乗客の安全を守る鉄道員の矜持(きょうじ)がにじみ出た、すてきな一文だと記憶に刻まれている。

「いろんな人の思いを乗せて、列車は走ってるんですね」「鉄道って、そういう乗り物だよね」。そんな会話を大無田記者と交わした。見慣れたいつもの駅が、なんだか輝いていたようだった。

(さ)

【特急「かながわ」号】運転時刻

桜木町10時18分発、浜川崎10時41分着(9022M)

浜川崎11時12分発、新鶴見信号場11時27分着(9023M)

新鶴見信号場11時44分発、橫浜羽沢12時02分着、25分発、根府川13時16分着(9025M)

根府川13時58分発、相模貨物14時20分着、40発、関内15時19分着(9026M)

車内で皆さんにお答えいただいたアンケート結果は、後日、このコーナーでお知らせいたします。