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コラム〈前照灯〉80 【ぜいたくな居眠り旅】

2011年4月29日 金曜日

 カコーン。ファールチップのような金属音でまどろみから覚める。振り子のように揺れた頭を、通勤電車の金属ポールにしたたか打ちつけた。白昼の京浜東北線。痛みよりも、激しい羞恥。周囲の視線をおもう。目を開けるのがためらわれる

▼子ども時代から、乗り物に乗るとすぐ眠りに落ちる。「いい大人」になっても変わらない。女性の隣に座ると迷惑をかけるので、こちらから避ける。なるべく隅っこに座る。と、金属ポールに…

▼一人旅だと、旅程の半分(あるいはそれ以上)は眠っている。秋田から乗った各駅列車。ハタハタの駅弁を平らげてから世界が遠のき、「象潟」…「あつみ温泉」…「坂町」。意識の合間合間、ホームの駅名表示が記憶の端に辛うじて残る。「せっかくの旅を居眠りするなんて…」。家人の幻の声がする

▼江差線、根室本線、田沢湖線、大湊線…。(私の)一人旅は、なぜか、寒々しい季節、北国を選ぶ。適度にスチームに温められ、あぶられ、スルメイカみたいになる

▼ところが、新幹線だと、こんどは眠れなくなる。「新幹線を運転する」の著者・早田森さんが、雑誌に書いている。東海道新幹線で睡眠をとりたい場合、上りはE席、下りはA席がよい。新幹線は対向列車とおよそ3分に1回すれ違う。上りのE席、下りのA席は常に外側になるから、衝撃でしょっちゅう眠りを妨げられることがない、と。

(S)

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