30年以上を経て再会した北海道の函館本線昆布駅は、すっかり変わっていた。線路脇にある豪雪地帯の鉄路を守る防雪林をかすかに覚えていた。そこにはいま、都会のコンサートホールと見間違う豪華な鉄筋コンクリートの施設が立つ。ニセコ連山を望むローカル線の駅の風情はもうない
▼豪華施設が気になり、ホームからガラスのチューブ状の跨線橋を渡った。地元の蘭越町営温泉施設幽泉閣だった。フロントでホテルマンのような上品な振る舞いで迎えたのは町職員。国鉄清算事業団から防雪林を買い取った、と教えてくれた
▼50代とみえた町職員に、かつて蒸気機関車C62が引く急行ニセコを撮影に訪れたことを伝え、「記憶や記録はありますか」と尋ねた。町職員は、客でもない突然の来訪者の問いに「いいえ、すみません」と。鉄道ファンを魅了したC62重連は地元でも忘れ去られてしまったのか
▼昆布駅に戻った。駅舎にはJR北海道が運行するC11ニセコ号の観光ポスターがあった。2時間も待てば出合える。でも観光列車には興味がない
▼近くの山深い五色温泉に「昭和50年ごろ」と歴史を伝えるモノクロ写真がある。山小屋風の建物と混浴露天風呂、急行ニセコが走った時代だ。「ニセコ」はもうセピア色の世界にいるようだ。
(O)