‘客車’ タグのついている投稿

コラム〈前照灯〉96 【SLと焼きまんじゅう】

2011年9月9日 金曜日

水上温泉の露天風呂に漬かっていると、利根川を越えて蒸気機関車の長い汽笛が聞こえてきた。午後1時24分水上発高崎行き「SLみなかみ2号」のD51が出発を告げている。蒸気機関車の汽笛と煤(ばい)煙の匂いは旅情を誘うと書いていたのは、内田百閒だったか

▼8月27日は高崎―水上間をD51とC61がそれぞれ往復した。D51の指定席が取れたので乗ってみたのだが、満席の車内は子ども連れが多く、実ににぎやかなことであった。沿線の撮影スポットにカメラの放列が敷かれ、乗客は窓の外に向かって手を振るのに忙しい。子ども以上にパパが興奮し、お付き合いのママは冷静というパターンが目立った

▼高崎発下り「SLみなかみ1号」は途中、渋川駅で20分余り停車した。ホームで上州名物の焼きまんじゅうを購入する。向かい座席の子どもの視線を感じつつ、かぶりつくと中にあんこが入っているではないか

▼「焼きまんじゅうは貧しい食べ物なのだ。中身のないまんじゅうを焼き、みそ、しょうゆ、砂糖で作ったタレを塗るシンプルさがいいのだ。これは邪道だ!」。突如怒りだしたおっさんに向かい座席の子どもが目を丸くし、連れが恥ずかしそうなので、矛を収めた

▼「SLみなかみ2号」には乗らず、上越線の普通電車で帰ることにし、ゆっくり温泉に入った。徒歩で水上駅に戻る途中、川向こうをチョコレート色の客車を引いてひた走るC61の威容が見えた

(N)

N