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コラム〈前照灯〉41 【廃線跡訪ねて北海道 その5】

2010年7月30日 金曜日

 天北峠。興部川に導かれてきた名寄本線も分水嶺を越え、今度は名寄川に沿う。かつては「一ノ橋」「二ノ橋」と駅が続いていたはずだ。この廃線跡探訪は、もう20年近く前の話だが、あの光景を目の当たりにした興奮は忘れられない

▼国道239号は二ノ橋の手前で廃線跡をまたぐ。「あっ」と声が出た。いきなり俯瞰したのだ。遠くまで真っ直ぐに延びる道床。川辺の平地を突っ切っていく。峠を越えたばかりの1両の気動車が心地よげに惰力で駆けていったことだろう

▼雑木の侵攻が既に線路跡に及び、砂利敷きの間からもさまざまな低木が立ち上がろうとしている。すぐにも茂みに覆われ、自然に戻っていくように思われた。廃線に追い込まれた動揺や葛藤が静まり、未整理のままに埋もれていく風景だった

▼途中、下川駅跡を見た。急行も停車した沿線有数の町である。広い構内は荒れ、水たまりが行く手を阻む。切れ切れのレール。つながれたまま気動車が3両さらしものになっていた。あせた塗色に西日がかかり、その姿が水たまりに鏡像となって浮かぶ(写真)

▼「駅はなくなったけど、ターミナルというビルができて、そこで結婚式も挙げられる」と、通りがかりのおばあさんが指差した。といって人けはなく、最初は消防署かな、と思った建物である。夕暮れの中、下校の高校生らの自転車がちりちりと過ぎていった。

(F)

キハ22