昨秋登場したJR東日本「成田エクスプレス」の新型車両、E259系。1991年から活躍している253系のコンセプトを受け継ぎつつ、斬新な先頭部が目を引く。内装面でも、座席の改良やユニバーサルデザインの採用など、最新のサービス水準に合わせた車両となった。今回は、このE259系を例に、鉄道車両の「デザイン」について考える。
【上中下の3回に分けて掲載します】
赤、黒、白のカラーリングは車内にも
「鉄道車両としての条件」と「デザイン」の兼ね合いを、もう少し詳しく見てみよう。
まず、車体の構造。253系は国鉄時代と同じ鋼鉄製だったが、E259系はアルミ押し出し材を用いた。これは、253系の車体の腐食が目立ってきたため。風雨にさらされて長年使われているうちに、さびが浮いて塗装面にふくらみ、凹凸を生じさせる結果になった。アルミ材ではそうした心配が少なく、近年のJR東日本の特急車両に多く使われている。
次に、高い位置につくられた運転席。これにより下部に空間ができ、貫通扉を設けることができた。横浜方面からのN‘EXと新宿方面からのN’EXが連結して運転する際、乗客が車内を通り抜けられるようにするには、必須の構造なのだ。従来の253系では、通り抜けができない。
ほかに、乗車定員の確保なども挙げられる。繁忙期に備え、一定の輸送力を維持するためだ。こうした条件は、安全で使いやすい車両を―という、運行上の要求だが、ユーザーからの視点も、もちろん欠かせない。特急列車に対する利用者の期待レベルは、年々高まっているためだ。
荷物置き場に備えられたダイヤル式の鍵
E259では、出入り口付近の荷物置き場にダイヤルロック式の鍵を初めて設置し、セキュリティーを向上。防犯カメラや非常通報装置も設けられた。快適性の面でも、ホームとの段差を少なくしたり、大型洋式トイレをつくったりと、ユニバーサルデザインが取り入れられた。
車いすのまま入れる大型のトイレ
室内に目を転じれば、木目調の壁板(化粧板)や、天井の間接照明が目を引く。これも、居住性向上の一環。背景には、技術や材料の進歩がある。「化粧板といえば、昔は一種類でしたが、今はいろいろな素材が使えるようになりました。デザインの自由度が広がった、ということです」と、担当するJR東日本の車両技術センター。間接照明を採用する際にも、天井がテカテカ光るような素材は避けたという。
グリーン車の室内。木目調の壁(化粧板)や間接照明、革張りのいすなどが、落ち着いた雰囲気を醸し出している
(つづく)