ローカル線のプラットホームの端に、タチアオイやコスモスなどの花が風に揺れている。旅情をかき立てる点景である。機能一点張りのターミナル駅では、まずお目にかかれない
▼チェコの国民作家、カレル・チャペックのエッセー「園芸家12カ月」に「植物学の一章」というくだりがある。チャペックが独自の植物分類を試みているのだが、駅で非常に生育がよい植物を「ステーション・フローラ(植物)」と分類し、さらに駅と駅長の庭に生じる植物の2亜綱に分けた
▼このうち駅に繁茂している植物としてキンレンカ、ロベリア、テンジクアオイ(ゼラニウム)、ペチュニア、ベゴニアなどを挙げた。園芸マニアならご存じの種類ばかりだ。ステーション・フローラの特徴を「非常に花づきのいいことと、色彩の華やかなこと」と分析している
▼先日、江ノ電に乗る機会があった。和田塚、由比ケ浜の両駅にはホームに花壇があり、今が盛りのアジサイをはじめラベンダー、ゼラニウムなどが咲いていた。稲村ケ崎駅では、プランターにペチュニアの花が揺れていた
▼初めて気づいたのだが、江ノ島駅上りホームの待合室に隣接して小規模な庭園が設けられていた。看板に「ガー電」の文字。そうきたか! ダリアやハーブ類などが花づきよく、色彩も華やかに咲き競っていた。植物学者としてのチャペック先生に敬意を表したい。
(N)
