酒の上の失敗は枚挙にいとまがない。これは、そのうちでもかわいい部類
▼過日、荻窪に所用ができた。荻窪といえば、学生時代に井伏鱒二邸をのぞきに行き、帰りに春木屋で中華そばを食べた思い出があるくらい。用事が済み、駅前から少し歩いて、焼き鳥の鳥もとへ。以前、駅前にあった有名店らしいが、再整備の関係で移転したという
▼お酒をおいしくいただいた。「おいしく」というのがくせ者であって、そう感じた時点で黄信号がともっている。横浜を目指して新宿へ。湘南新宿ラインが来るまで時間があり、「どうせ込んでいるんだろうなあ」とつぶやいていると、「ホームライナー小田原21号」が間もなく発車することを知る。ずいぶんと離れたホームへ急ぎ、500円の着席券を買って滑り込んだ。既に判断力が酒毒に侵されていたというほかない
▼「座って帰りたい」の一念は、車内アナウンスで打ち砕かれた。次の渋谷を出たら、藤沢まで停車しない! なぜ乗る前に停車駅を確認しなかったのか! 500円をドブに捨てたつもりで渋谷での下車を決断した
▼ところが、渋谷でドアは開かなかった。同駅からの乗客用の車両は別で、新宿乗車の車両はドアが閉まったまま。車内を移動して降りるにも前後どちらに行っていいか分からない。藤沢までの小旅行を覚悟し、席に戻って寝たふりを決め込んだ。
(N)
