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コラム〈前照灯〉81 【線路が救った】

2011年5月6日 金曜日

 かつて釜石線と山田線を乗り継いだ。下車せず乗り通し。新花巻から盛岡へ行くのに北上山地を二度越えた。そのときはどういうわけか妻が付いてきた。案の定、彼女は退屈したが、高みの車窓から見る三陸海岸には声を上げた

▼震災は鉄道もずたずたにした。JRの被災7路線では23駅が流され、線路や橋梁など1680カ所が壊された。釜石線も山田線も動きだしたものの、沿岸の釜石―宮古間は復旧のめども立たない。東北新幹線の運転再開は騒がれたが、ローカル線の状況は首都圏の新聞にはあまり載らない

▼そんななかで「山田線が多くの命を救った」との記事を見かけた。入り江と分水嶺が連続するリアス式海岸。線路は峠に向かう25パーミルの勾配だった。確実に高みに至る。人々は枕木の上を駆けた。後ろに津波が迫る。ようやく背の母を下ろして振り返ると「視界一面が海だった」

▼地方鉄道はそこに暮らす人々ともども運命共同体のように思える。JR東日本の社長は「すべて復旧させる」と強調したが、過去の歴史をみても災害から立ち直れないまま廃線となった線区は少なくない

▼もとより閑散路線。被災地復興の姿とはいえ沿線人口が減れば存続が苦しくなる。集落自体が移れば路線変更を迫られる可能性もある。祈らずにはいられない。三陸の、あの美しい車窓風景が目に焼き付いている。

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