‘通勤路線’ タグのついている投稿

“鉄道画家” 松本忠さん〈下〉 【ローカル線への思い】 「まるで励ましてくれるような…」

2010年2月24日 水曜日

みずみずしい田園地帯に伸びる単線のレール、ススキの穂が黄金色に輝く小さなホーム…。日本の鉄道が見せる、穏やかでホッとするような一こまを、細密かつ情感豊かな水彩画で描くイラストレーターがいる。横浜市生まれ、さいたま市在住の松本忠さん(36)。鉄道好きならば、月刊誌「鉄道ダイヤ情報」に連載された作品を覚えている人も多いだろう。「鈍行列車のリズムが好き」と話す松本さんに、作品に込めた思いを聞いた。【上・中・下の3回に分けて掲載】

■ ■ ■

浅田志津子さんの詩「たたんだ千円札」とコラボレーションした松本忠さんの作品

浅田志津子さんの詩「たたんだ千円札」とコラボレーションした松本忠さんの作品

松本さんは、ローカル線に対して格別の思いがある。「日常とのギャップが楽しいんです」。とりわけ、多忙を極めた会社員時代に、そのことを強く実感したという。まるで“体内時計”が戻るような感覚。「3カ月間休みがなかった」こともあるほどの厳しさだったからこそ、「癒やし」という言葉以上の、かけがえのない時間を手に入れた思いだったのだろう。

会社勤めを始め、自ら「生活」するようになったからこそ、見えてきたものもある。風光明媚(めいび)な区間ばかりでなく、身近な通勤路線にも、人々の暮らしの奥行きのようなものを、感じ取ることができるようになった。「どこにも必ず魅力的な、絵になる“横顔”がある」

今も、幼い娘を自転車で送り迎えするとき、ちらりと見えた鉄道の日常のたたずまいに、ハッとさせられることがあるという。会社員時代、名古屋に転勤したときは「大きな旅行だと考えれば楽しめた」というから、前向きなのだ。

◇◆◇

好きな路線を尋ねると、「全部の路線が好き」という前提で、JR五能線(秋田、青森県)とJR只見線(新潟、福島県)を挙げた。東北地方の海、山をめぐる景色のいい路線だが、それだけではない。

「力強く走るローカル線に勇気づけられた」という松本さん=東武野田線 大宮駅

「力強く走るローカル線に勇気づけられた」という松本さん=東武野田線 大宮駅

「五能線は鉄道を好きになるきっかけをくれたし、只見線には、会社を辞めて郡山に移住したとき、初めてスケッチブックを持って訪ねた思い出がある」。着実に山道を登っていくディーゼルカーの足取りは、「ゆっくりでも進んでいけば、いつかは着く」と励ましてくれているようだったという。

◇◆◇

「どの駅にも平等に止まり、ちゃんと目的地まで連れて行ってくれる」。人々の生活を下支えしているローカル線は、見かけこそのどかだが、力強くさえある。それを、松本さんは描き続ける。

(斉藤 大起)

 

 

■ ■ ■

松本さんの最近の著作は、「大人の塗り絵 POSTCARD BOOK ローカル線のある風景編」(河出書房新社、861円、2009年4月発行、カラー)。江ノ電や銚子電鉄、五能線、飯田線など、16路線の四季折々の風景が収められている。

大人の塗り絵

只見線が描かれているパズル「空を映して」

只見線が描かれているパズル「空を映して」

また、ジグソーパズルも発売中。「空を映して」(只見線 根岸-会津高田、本体3千円)、「真冬の色彩」(只見線 会津柳津-郷戸、本体2千円)、「ふるさと色づいて」(会津鉄道 湯野上温泉駅、本体2千円)、「風を追いかけて」(磐越西線 川桁-猪苗代、本体1400円)の4種類。いずれも、発行は「やのまん」で、全国の玩具店、家電量販店などで発売中。

今後の作品展は、3月16日~21日、さいたま市「大宮第二公園ギャラリー」。4月1~6日には、埼玉県熊谷市の「八木橋百貨店」で行われる鉄道フェアに作品を出展する。

松本さんの作品がアップされているウェブサイト「もうひとつの時刻表」のホームページアドレスは http://www.k4.dion.ne.jp/~tadashim/