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コラム〈前照灯〉87 【列車は走るか陸前高田】

2011年7月8日 金曜日

 「踏切です」。女性の乾いた声がカーナビから流れた。そこに鉄路はない。地平線までがれきの荒野が広がる。ナビの目的地は岩手県のJR大船渡線陸前高田駅。踏切の先にホームがあった。あたりには木片や鉄板が絡まり合った残骸が50センチほど積み上がっている。一ノ関駅行きディーゼル列車が復活する日は本当に来るのだろうか

▼すぐ脇をダンプカーが土煙を上げて通り過ぎた。大津波で壊滅したまち、がれきの撤去作業が続く。ほこりが舞い、魚の腐臭漂う人けのない道に自転車が1台現れた。被災者だろうか、男性は3カ月を経ても復興のめどが立たない港町を無表情に眺めていた

▼大船渡線の陸中海岸側の終着駅は盛駅。2両編成の列車がホームに停車したままだ。いつ動くのか誰にも分からない。「半年とかそういう単位じゃない」。駅員はそれ以上語らなかった。復旧の見通しという言葉が無力に思えた

▼なにもかもなくした陸前高田の飲食店の男性経営者は、避難先で復興への私案を練り続ける。「大津波被災壊滅都市遺産」構想。ユネスコの世界遺産登録を目指すのだと、自らを奮い立たせる

▼荒野を自然エネルギーあふれるまちに再生する夢。構想にぜひ加えてほしい。ごっとん、ごっとん、と走るディーゼル列車の姿を。

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