また車窓の話。このうえない光景がJR瀬戸大橋線にある。この長大架橋が完成して23年。塩飽諸島の5つの島を列車で伝いゆくひとときは何度味わっても飽きない。穏やかな内海。光る水面に島影が重なる。その遠近、濃淡、その移ろう変化―
▼今夏も帰郷した。児島を出たマリンライナーは鷲羽山トンネルを抜けると、そのまま瀬戸の中空に飛び出す。その日は雨がちで、車窓風景も水墨画のごとくであった
▼しかし、前席の家族連れは全く無関心だった。幼い姉弟は窓のひさしの上げ下げに熱中して騒ぎ放題、若い父親は携帯に没頭、母親は勝手に熟睡していた。海を渡るのだ。ここは親が子どもの目を外に向けさせるべきではないか
▼土讃線でも同じ思いをした。琴平発阿波池田行き普通列車。猪鼻越えの勾配を背にスイッチバックの秘境の駅・坪尻にかかる。やがては吉野川流域へ下る曲線区間。四国山地の中央構造線に沿う四国三郎の流れ。眼福に心も晴れ渡る。だが、ここでも家族連れが知らん顔
▼車窓風景は得難い教材だ。まして夏休み。親にはそれらの説明責任があると思う。風景に見入るのが鉄道ファンばかりでは寂しい。坪尻駅あたりでは前面展望を動画に収めようとする者が運転席横に集まった(写真)。おかげで私の展望はさえぎられた。
(F)
