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コラム〈前照灯〉75 【単コロの走る夜】

2011年3月25日 金曜日

 漫画「鎌倉ものがたり」が連載25周年を迎えた2008年夏、作者の西岸良平さんに本紙「K-Person」にご登場願おうと動いた。出版社を通して依頼したが、名うてのマスコミ嫌いとあって実現しなかった。もっとも「三丁目の夕日」が映画化された際にも西岸さんはメディアへの露出がなかったように思う

▼既に300回を迎えた作品中で、江ノ島電鉄が重要な舞台となっていることはよく知られる。手元にコンビニで入手した傑作選があるが、「単コロの走る夜」(97年発表)は名作の呼び声が高い

▼主人公のミステリー作家・一色正和が江ノ電車内で妻亜紀子に歴代の車両を説明するシーンから始まるのは、鉄道ファンである作者の面目躍如。会話は「単コロ」の愛称で親しまれた100型に及ぶ。正和は引退した単コロの幽霊が出るといううわさがあると明かす

▼鎌倉で未明に殺人事件が起きる。被害者に高額の保険をかけた人物が捜査線上に浮かぶが、事件当夜は池袋にいた。横須賀線の運行は終わっていて、車を使っても鎌倉での犯行後30分で池袋にたどり着くことは不可能だ。両地点を結んだのは?

▼「鎌倉ものがたり」には幽霊、妖怪の類いがよく登場し、本格ミステリーとは一線を画す。しかし、ほのぼのとしたムードは、まさに西岸ワールド。読むうちに鎌倉巡りもできる。ちなみに湘南モノレールを舞台にした「凍りついた場面」(87年発表)などもあり、楽しませてくれる。

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