鉄道模型(Nゲージ)の巨大レイアウトがカウンターに据えられ、新旧の電車が右に左に快走するバーが、藤沢駅前のビルに開店した。その名も「ジオラ・バー」。車両や駅に明かりがともり、ちょっとした“夜景”も楽しめる。
入り口のドアを開けると、シャーッという音が聞こえてくる。模型の列車が金属製のレールを滑るように走る音だ。縮尺は実物の150分の1。線路の総延長は70メートルもある。16両編成の新幹線「グランドひかり」は2.7メートルにもなるが、悠々と駆け抜ける。線路は4本あり(つまり複々線)、4列車が同時に走行することができる。
圧巻は、赤と緑の大鉄橋。アーチ状に湾曲したトラスの具合や、下が透けて見通せる踏み板の造作など、つい顔を近づけてじっくり見たくなる。その下を流れる川の水も、透明感があってすがすがしい。
仕掛けたのは、市内で洋服店を経営するオーナーの金井和徳さん(48)。子どものころからの鉄道好きで、中でも地元を走る小田急がお気に入りだという。店の壁面には、金井さんが20年以上かけて買い集めた約700両ものNゲージの車両が展示されている。
そして、実際にレイアウトを制作したのは、元国鉄マンのバーテンダー須藤高通さん(51)。ジオラマ制作にかけては、その道の”ベテラン”。大鉄橋をはじめ、駅や街並みなどの情景を、4カ月がかりで「徹夜しながら」手作りしたという。ホームの屋根裏や海べりの木造家屋、道ばたにある街灯には、一つ一つにライトが入れられ、キラキラと光る。これは立派な「夜景」だ。秋葉原で抵抗などの部品を買い集めた。
列車の室内にも照明が入れられ、それがちらつかないよう、通電部分のレールや車輪は毎日、丁寧に磨いているという。1日走らすだけで、レールをふく布きれが真っ黒になるとのこと。ほかにこだわったのは、道路や山肌などの「地面」。土のざらざらした表面は陰影があり、一つの“表情”を醸し出す。
レールは英国のPECO製。国産に比べ、レールの高さなどが実感にあふれているため、こだわった。そのレールは、さびで汚れた感じを出すため、茶色く「汚し塗装」が施されている。
「幼いころに見た懐かしい風景を再現したかった。鉄道ファンはもちろん、女性のお客さんもたくさん来ますよ」と金井さん。
店内ではNゲージ車両の販売もしているほか、こうしたジオラマの制作も請け負うそうで、お好みの大きさや時代設定に応じるという。鉄道模型店さながらだ。一方、バーならではのサービスとして、「ボトルキープ」ならぬ「車両キープ」もあるそうで…。
日曜、祝日定休。問い合わせは、電話0466(24)1888。
(斉藤 大起、写真は立石 祐志)