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コラム〈前照灯〉102 【阿漕な話】

2011年11月4日 金曜日

旅の僧が密漁をして海に沈められた漁師の霊から懺悔(ざんげ)を聞く。世阿弥の作とされる謡曲「阿漕(あこぎ)」である。三重県津市の阿漕ケ浦は、伊勢神宮に供える魚をとる海として禁漁の地であった

▼青春18きっぷを利用し、中京から関西を一人で旅行した昨年夏の話だ。名古屋発の快速みえ号で伊勢神宮、鳥羽水族館をめぐる日程を組んだ。みえ号は関西本線~私鉄の伊勢鉄道~紀勢本線~参宮線を経由して運行している

▼青春18きっぷでは、伊勢鉄道分の運賃を別途支払う必要がある。行きの車中、車掌に申し出て河原田~津の490円を渡した。伊勢神宮の参拝、ジュゴンのいる鳥羽水族館見学は実に楽しかった

▼ところが、帰りの車中のことである。酷暑の中の各駅停車の旅で疲れてもいた。紀勢本線・阿漕駅の通過は覚えているのだが、電車に揺られる心地よさに、ついウトウトと…。気がつくと伊勢鉄道線内はとっくに過ぎ、関西本線の桑名駅辺りを走行中だった

▼さて、どうする? みえ号は一部指定席で、車掌は自由席の検札は行わず通り過ぎるだけ。伊勢鉄道分の運賃支払いは事実上、自己申告制なのだ。その際、車掌がもう来なければいいのにと思ってしまった心の動きを反省している。このコラムの執筆者としてあるまじき阿漕な心根と弾劾されようとも仕方ないと思う。これは懺悔であります。

(N)